ⅩⅤ

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   あなたなら大丈夫、か。  力強い言葉だ。心の機微を知り、人を認め、人を信じられるからこそ言えるのだろう。  裕子さんの言葉のひとつひとつが、胸に染みた。自分に当てはめると、凄く痛かった。  成功者とは人を豊かにすることだ。  かといって、なにも金銭的なことだけではない。生きる希望を持たせ、環境を変えてやれるのも成功者の力と言えるだろう。  それによって人を幸せに導けるのが、真の成功者と言えるのかも知れない。  昭三さんも真理子も、目頭を押さえている。当の角児もそうみたいだ。うつむいたまま、顔を上げない。ただ時々、鼻をすする音が聞こえるから、心に深く刻まれているのだろう。    代わりに頼子が口を開いた。 「裕子さん、主人に暖かいお言葉をありがとうございます。  これからも家族で手を繋ぎあい、前に進みます。  それから、福岡の『吉永君』のことは、善処いたします」  微笑む裕子さんに、頼子が続けた。 「裕子さんには、何から何までお世話になりっぱなしで、本当に申し訳ありません。  差し出がましいのですが、私たちであなたに何かしてあげることは、ございませんか?」  すると、途端に裕子さんが顔を赤らめた。  どうしたのだろう。  少女のようにはにかみだした。 「実は……厚かましいお願いが、ひとつだけあります」  顔を輝かせ頼子が答えた。 「何ですか?  何なりと言ってください」  それでも裕子さんは顔を上げない。一体、何が恥ずかしいのだろう。着物の柄の紅葉までが、赤く染まっている。  ようやく覚悟を決めたようで、小さな声が聞こえてきた。 「あの……。  もしご迷惑でなかったら、私はこの近くにアパートを借りろうかと……」  
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