ⅩⅤ

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   昭三さんは何度も、ありがとうと言った。彼もまた、涙が止まらないようだ。  見かねたのか、裕子さんはバッグから新しいハンカチを出して、昭三さんにそっと渡した。  そのハンカチには、鮮やかな紫のキキョウが刺繍されている。  花言葉は『永遠の愛』なり。  七十年の時を経て、ようやく二人は永遠を分かち合えた。  ひとしきり涙した昭三さんは落ち着いたのか、笑顔を見せ真理子を呼んだ。 「すまないが、それをとってくれないか」  昭三さんのあごの先にあるのは、里の秋を奏でる、父親との思い出を込めた、あのオルゴールだった。  怪訝そうな顔を見せながら、真理子は昭三さんに手渡した。  昭三さんは大事そうにオルゴールを撫でると、裕子さんを見つめた。 「あなたに見せたいものがあるんだよ」    そう言うと昭三さんは、オルゴールをひっくり返して、底に貼ってある緑色のフェルトを剥がし始めた。そして、中から一枚の紙片のような物を取り出し、裕子さんに渡した。  何ですか、と笑みを浮かべていたのだが、受け取ると裕子さんは、感嘆の声をあげた。  彼女は口を押さえ、大粒の涙をこぼし始めた。  
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