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おれはまた咳払いをして言った。
「え―、僭越ではございますが、わたくしが神父役をやらせていただきます」
病室の中での結婚式。
新郎は八十七才の昭三さん。新婦は八十六才の裕子さん。二人合わせると百七十才を越える、ギネス級の新婚さん。何もかもが異例だ。
嬉しさを胸に留め、向かい合う二人。
立会人は、未来を胸に抱いた家族たち。
七十年前に行われていたはずの儀式が、今、笑顔の中で始まった。
うつむき加減の裕子さんに、おれはベールを被せ、赤い花束のブーケを渡した。真理子が、昭三さんに黄色い花束のブーケを渡す。
すでに二人は、新郎と新婦の顔になっている。
着物にレースのベール。アンマッチのような気がするけど、これがなかなか似合っていた。
おれは低く、だけど隅々までとおる声で宣誓した。
「これより、新郎、立石昭三さんと、新婦、安河内裕子さんの結婚式を執り行います」
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