ⅩⅤ

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   昭三さんも曲に聴きいっているのか、黙って天井を見上げている。それからおれと目が合った。  当然、誓います、そう答えるものと思っていたのに、違ったのだ。  昭三さんはゆっくりだが、はっきりと言った。 「I will(誓います)──」    驚いた。こんな返しでくるとは。  2011年4月に、イギリス王室のウィリアム王子とキャサリン妃が、ロンドンのウエストミンスター寺院で挙式をあげたのは、まだ記憶に新しい。  その時、ウィリアム王子が神父に告げた言葉も、「I will──」だった。  この曲も、そのことも昭三さんはきっと知っていたのだろう。続く裕子さんへの言葉で、そう思った。 「I will love you for the rest of my life」 (残りの人生をかけて、ぼくはあなたを愛します)  だけどもっと驚いたのは裕子さんだ。それに英語で答えたんだよ。 「I love you too. I will always be with you」 (わたしもです。いつまでもあなたのそばに居ますよ)  そして裕子さんは、おれに軽くウィンクを投げた。  まいったな。この年でも二人は、英語がわかるんだ。おれはすかさず、お祝いの言葉を送ったよ。 「I pray that yours future will be happy」 (お二人の未来が幸せでありますよう、祈ってます)  二人は同時に、笑顔でうなずいてくれた。  
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