エピローグ

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   裕子さんは裕子さんで、相変わらずスーパーおばあちゃんをぶりを発揮した。  昭三さんの介護の合間をぬって、エスティ運送を有限会社から株式会社へと組織変更したのだ。  基本、株式会社は株主のもの。社長のものではない。持ち株数で力が量られる組織だ。  その持ち株数が絶妙だった。  裕子さんが全株式の31%を持ち、筆頭株主になった。それから裕子さんの息子に、20%の株を持たせた。二人で51%だ。  そして社長の角児には25%を、専務である角児の息子には14%を与えた。  頼子にも10%持たせ、取締役に就かせることで経営に参画させた。  上場していないから、株主の総意がないと、勝手に株式を売ったり譲ったりは出来ないので、その比率は変わらない。  しかも、裕子さん親子で過半数の51%を越えているので、三人の株を合わせても49%の立石家は、裕子さんたち親子には勝てない。  だから、角児が身勝手な提案をしても否決出来るし、また会社を危うくしたら、社長を解任できる。  株式会社への変更は、そのための歯止めも兼ねている。   しかしあくまでも目的は、エスティ運送を将来的に、安定、成長させるためらしい。  今の彼女は言う。もう角児さんは、心配ないでしょう、と。  いずれ会社が落ち着いたら、角児に自分たちの持ち株を売却するとも言っていた。  その時こそが、エスティ運送の、と同時に角児の、新たな旅立ちとなるのだろう。  
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