エピローグ

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   頼子は、というと、お飾りだけの取締役は嫌だからと、真理子から経済の仕組みを教えてもらっている。  そして春からは経理の専門学校に通い、いずれエスティ運送の経理責任者になるんだと、張りきっている。  それは併せて、角児のお目付け役も兼ねているらしいけどね。  真理子は研究者になるべく、九州大学薬学部への編入を目指している。  合格したら福岡に住むらしくて、絶対に合格しておれに会いに来ると、気合いが入っていた。  その時は博多の町を案内してね、と言われている。それは別にいいんだけど、問題は喫茶店の美智子だ。  案内するにしても、美智子にばれないようにしなきゃいけない。美智子ったら、すぐに焼きもちを焼くからね。  怒らせると、あいつをなだめるのは大変なんだよ。    それから、吉永いずみのことにも触れておこう。  彼女は角児から、残った借金をチャラにしてもらい、百万円の特別退職金と、『今まですまなかった。ありがとう』を受けた後、実家に戻った。  そして町役場に勤める、十才上の男性とお見合いをしたそうだ。彼女もまた、幸せへの道を歩みだした。これは裕子さん情報だから確かだと思うよ。  そうそう今日は2月4日。  立春だ。  知ってるかな。  立春から、毎日の最高気温を足していき、それが540℃を越えると桜が咲くそうだ。  とは言え、ポカポカ陽気の冬だからと言って、桜の開花が早まるわけではない。冬の厳しい寒さを過ごすことで、迎えた暖かさにスイッチが入り、桜は開花の準備を始めるらしい。  それは立石家も同じかも知れない。凍えるような冷たい時を過ごしてきたからこそ、待望の春がやってくるんだと思う。  やがて540℃に達した春には、立石家にも、吉永いずみにも、きっと満開の笑顔が咲き誇ることだろう。  
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