短編 模擬戦

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東雲と神結互いの力のぶつかり合いが開始する。 神結は抜刀の構えから柄を握り、直線上に立つ東雲に向かって駆ける。 東雲は動じる気配はない。彼の脳裏には降り掛かる危険を予知して避ける方法を示している。ならば彼女の攻撃を避けた先に生まれる隙を付き攻撃に繋げるかを思考している。 神結は彼を捉え刀を走らせ抜刀する。胸の位置に狙う凪ぎ払い。 対する東雲は、彼女の攻撃範囲に入る一歩手前で腰を落とし体勢を低く保ち、彼女の凪ぎ払いを避ける。 ここに生まれた彼女の隙を東雲は見逃すことなく攻撃の一手へと繋げる。 低く保った体勢から踏み込み、彼女の懐に拳を叩き込む。 ここまで来ると彼の予知と彼女の反射神経の早さがものを言う戦いとなる。 神結は東雲のカウンターを予測していたかのように凪ぎ払いと同時に踏み込んだ足に重心を起き、体勢を彼とは逆の方向へ倒す。 東雲のカウンターは奇しくも彼女の脇を霞めた。 初撃においては相手を捉える事ができず引き分けに終わるも、予知と反射神経の戦いにおいて彼女が有していた結果がここに証明された。 どちらの一手も当たっていれば、致命傷とまでは言わないが行動を制限するだけの威力を有していた。 東雲は死を回避する力。 神結は可能性を引き寄せる力。 彼らは自分の魔術を『危険予知』,『致命傷を与える』と捉えているが、本質はそれだ。 神結が東雲に勝つ可能性を手繰り寄せ致命傷となる剣技を繰り出す。 対する東雲は致命傷となる剣技を察知し紙一重の避ける。 この模擬戦において互いの魔術のぶつかり合いは幾度と繰り返されるも互いに致命傷となる攻撃を与えられない拮抗状態が続く。 模擬戦に決着がつくとするなら抱く願いの強さが鍵を握る。
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