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今年の正月、俺は幼馴染みの正義(まさよし)、俊也(しゅんや)と一緒に初詣に行き、おみくじを引いた。
毎年出るのは末吉で今年も期待していなかったが、何年か振りの大吉の文字に、俺はちょっと興奮した。
「秀直(ひでなお)、アホみたいに喜んでるな。」
そう言うと、正義は俺の頭を腕に抱えて拳でぐりぐりする。
俺は身長が180センチ以上あり、筋肉もそこそこ付いているから、こんな事は滅多にされないが、正義は上を行く屈強な体格の持ち主だ。
俺達と一緒にいると、標準体型の俊也がひ弱なチビに見える。
その俊也が俺の手からおみくじを奪い、書かれた内容に目を走らせ、ぷっと吹き出した。
「なに笑ってんだよ。」
俺が顔を顰めると、俊也はにやにやしながら文字を読み上げた。
「商売励めば良し、失くし物いずれ見つかる、良縁望めば易し、だって。大吉の割に絶好調感なくね?」
「内容なんてどうでもいいんだよ。大吉は大吉なんだから。」
俺は俊也からおみくじを取り返し、綺麗に折り畳んで財布にしまった。
でも、このおみくじが暗示していた通り、俺の人生は劇的に変わることになる。
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