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俺は高校を卒業してから、相変わらずの日々を過ごしている。 アルコールの過剰摂取で肝臓を壊した親父に代わり、古びた食堂を引き継いでもう3年。俺は21歳になっていた。 最初は鍋の振り方さえ分からなかったが、今では食材の仕入れから、厨房で料理を作るのも俺だ。 バイトなんて雇えない小さな店だから、手伝いの殆どは明美(あけみ)さんにやって貰っている。 明美さんは親父の再婚相手で、30代後半だが容姿が整っている上に愛想も良く、彼女のお陰で常連客の売り上げが増えた。 親父はひたすら皿洗い。 たまに俺にダメ出しするが、元来無口な性格で、一言二言で終わるのが常だ。 閉店後はレジの売り上げをパソコンに打ち込み、本日の収支を確認する。 赤字が膨らんだ日は落ち込むが、黒字の時は安堵の溜め息が漏れた。 4つ下の弟、徹(とおる)は高校に通いながらラーメン屋でバイトをしている。 勿論、うちの店の手伝いは一切しない。 バイト代が入る分、小遣いは渡さなくて済むが、あいつには貯金と言う観念がないらしく、全て服や交遊費に注ぎ込んでいる。 大学に行くつもりなら、少しは学費の事も考えてくれよ…。
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