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不意に飯島が立ち上がり、にっこり笑って言う。
「閉店時間だね。
長居して済まなかった。
ご馳走様。」
そしてカウンターに金を置き、颯爽と引き戸を開けて外に出て行った。
飯島がいなくなり、俺は力が抜けて大きく深呼吸した。
すると、店にただ1人残っていたおっさんが、ぽつりと言った。
「彼は顔に似合わず悪党だな。」
その通りだ。
店を閉めた俺は階段を上り、自分の部屋のドアを開けた。
裕太はベッドにだらしなく寝転がりテレビを見ている。
9月の北海道は、昼間に思い掛けない暑さを見舞う事があっても、夜になると窓を閉めて眠れるほど涼しい。
だが、裕太は何故か上に着ていたTシャツを脱ぎ、ハーフパンツ1枚の格好だった。
裕太が俺をちらっと見て言う。
「ヒデくん、風呂入るんでしょ?」
「ああ…。」
季節に関係なく、厨房で仕事をする俺は常に汗を掻く。
本当はすぐにでも体を洗ってさっぱりしたい。
すると、裕太が言った。
「俺、テレビ見てるから、風呂入れば?」
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