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「それ、嫌味か?」
「あはは。
でもさ、俺はおざわ食堂が好きだよ。
みんな美味しそうに飯食ってる。ヒデくんの料理が旨いって思ってるんだよ。」
裕太はたまにドキッとする事を言う。
計算か、無意識かは分からないが、俺が嬉しくなるような事をさらっと口にする。
こんな時の裕太は、まだ16歳とは思えないほど大人びて見えた。
普段おちゃらけているが、仕事に対する姿勢や相手への配慮は、学生の域を超えている。
それを身に付けざるを得ない環境に置かれいるのだとしたら手放しに喜べないが、それでも俺はこんな裕太が好きだった。
唐突に裕太が言った。
「ヒデくん、髪が濡れてるじゃん。」
そして首に掛けたタオルをするりと取ると、俺の頭をがしがしと拭き始めた。
最初は手荒かったが、そのうち優しく撫でるように髪に触れる。
俺は仕事を終えた後の脱力感もあり、裕太にされるがままになっていた。
正直、気持ち良かった。
このまま寝てもいいかも、と思った矢先…。
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