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俺はぎゅっと後ろから抱き締められた。
座ったままの俺は裕太を背負っているような格好で、立ち上がる事が出来ない。
前にも厨房で押し倒された経験があり、部屋に入った時から雰囲気がちょっとおかしい事に気付いた俺は、驚いたが慌てはしなかった。
「裕太、放してくれ。」
「嫌だ。」
「重いんだよ。」
すると、裕太が肩から腕を解き、立ち膝のまま前に回って顔を近付けた。
俺は咄嗟に顔を反らす。
裕太が追い掛けて来るから、俺は肩を掴み、押し退けて言った。
「やめろって。」
「何で?」
「イチャイチャする相手はおまえじゃない。」
しかし、裕太は引かなかった。
「チューくらい、いいじゃん。」
「くらい、って何だ?
おまえ、誰とでもチューするのか?」
「…しないけど。」
「だろ?俺も、誰とでもチューしないの。」
裕太が口を噤ぐみ、眉根を寄せてじっと考え込んでいる。
妙な理屈でごねられる前に逃げ出そうと腰を浮かせたその時、勢い良く床に押し倒された。
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