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その顔を見た途端、俺は心臓が痛くなった。
裕太が可哀想で、こっちまで泣きたい気分になる。
いっそ、抱いてやればこいつの気が済むのだろうか?
いいや。そんな事をしても、やっぱり裕太を傷付けるだけだ。
俺が裕太の頭に手を置くと、裕太は俺の腰に腕を巻き付け、ぎゅっと抱き締めて来た。
それを振り払う事は、俺には出来ない。
裕太は俺のシャツに顔を擦り付けて涙を拭い、
「ヒデくんの方がバカ野郎だ。」
と呟いた。
翌朝、ベッドで目を覚ました俺は、背中に張り付くようにして眠っている裕太をぼんやり眺めた。
昨晩は言い争いの末に裕太がすっかり落ち込み、酔っぱらって帰れないと駄々を捏ね、おまけに一緒に寝ると言い出した。
キスしたり、触ったりしないと約束した上で、俺は渋々裕太をベッドに入れた。
今日は日曜で学校は休みだ。
俺は店を開ける前に裕太に朝食を作ってやろうと思い、顔を洗ってから1階の厨房に下りた。
2階にも我が家のキッチンがあるのだが、俺にとっては厨房の方が馴れ親しんでいる場所だ。
そこで魚を焼いたり、玉子焼きを作ったりした。
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