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家で商売をやっている俺からすれば当たり前の事だが、一般家庭では家族が顔を揃えて食事をするのが基本なんだろう。
でも、裕太の所は少々事情が違う。
家族の生活リズムが違い過ぎて、食事どころか顔さえ合わせていないのだ。
自分と徹を重ね合わせた裕太。
ただ、それを本人がどう思っているかまでは、俺には分からなかった。
食事を終えた裕太は
「ご馳走様。」
と言い、慣れた手付きで食器を洗う。
俺はその間に料理の下準備を始めた。
いつの間にか、裕太が俺の傍に来て手元を覗き込んでいた。
そして野菜の皮を剥く俺にぽつりと言った。
「俺、調理師免許取ろうかな。」
俺は手を動かしながら尋ねる。
「料理人になりたいのか?」
「うん。おざわ食堂で働かせてよ。」
俺は苦笑して首を振る。
「悪りぃな。
給料払えないから無理だ。」
さすがに裕太もあっさりと諦め、今日も石田達と遊びに行くと言って帰って行った。
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