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俺は今日も狭い厨房で野菜炒めを作ったり、魚を焼いたりと忙しい。 親父は体調が悪いと言って2階の自分の部屋に引っ込み、洗い場のシンクは汚れた皿やグラスで溢れていた。 明美さんは注文を取りながら料理を運び、ビールのお代わりに追われている。 この数日、北海道は6月初旬とは思えないほど気温が上がり、今夜はビールが良く売れていた。 厨房の中の蒸し暑さに、俺は大きく息をつく。 その時、カウンター席から 「ヒデくん、ビール飲みなよ!」 と声が飛んで来た。 常連のおっさんだ。 このおっさんは店員に酒を奢るのが好きで、親父が体を壊してからは、俺にご馳走してくれるようになった。 今日はこの暑さでめちゃくちゃ喉が渇いている。 俺は手を止め、おっさんのご厚意を有りがたく頂戴することにした。
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