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「よく食うガキだな。」
俺は独り言を呟きながら厨房でご飯を茶碗に盛り、カウンターに戻った。
「腹壊すなよ。」
そう言って茶碗を渡すと、裕太は恭しく両手で受け取り、
「いただきま~す。」
と満面の笑みを浮かべる。
俺は裕太を乱暴に扱うが、こいつの事は嫌いではない。
茶髪をつんつんに立て、はだけたシャツからシルバーのネックレスを覗かせているチャラい高校生だが、自分も悪ガキだったせいか親近感がある。
それに、俺の前では素直だった。
学校での裕太は知らない。
こいつの通っている高校は俺の出身校で、徹も同じだ。
2人は同級生だが、どちらの口からも互いについて語るのは聞いた事がなく、俺もわざわざ学校での生活振りなど尋ねなかった。
裕太がご飯を頬張りながら言う。
「イケメン、今日は来ないね。」
「ああ。」
俺はちらっと壁の時計を見る。
もう8時半だから、マシオは来ないだろう。
週3回来ると言っても曜日は決まっていないし、事前連絡もないから、目安になるのは時間だけだ。
裕太は口にご飯を入れたまま喋る。
「イケメン、ヒデくんと仲良いよね。」
こいつ、よく見てんな。
マシオが来た時は大抵、入れ替わるように裕太は帰って行く。
俺とマシオが話し込んでいる所なんて知らないはずだが、どうしてそう思ったんだろう?
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