5.

3/30
1639人が本棚に入れています
本棚に追加
/435ページ
「よく食うガキだな。」 俺は独り言を呟きながら厨房でご飯を茶碗に盛り、カウンターに戻った。 「腹壊すなよ。」 そう言って茶碗を渡すと、裕太は恭しく両手で受け取り、 「いただきま~す。」 と満面の笑みを浮かべる。 俺は裕太を乱暴に扱うが、こいつの事は嫌いではない。 茶髪をつんつんに立て、はだけたシャツからシルバーのネックレスを覗かせているチャラい高校生だが、自分も悪ガキだったせいか親近感がある。 それに、俺の前では素直だった。 学校での裕太は知らない。 こいつの通っている高校は俺の出身校で、徹も同じだ。 2人は同級生だが、どちらの口からも互いについて語るのは聞いた事がなく、俺もわざわざ学校での生活振りなど尋ねなかった。 裕太がご飯を頬張りながら言う。 「イケメン、今日は来ないね。」 「ああ。」 俺はちらっと壁の時計を見る。 もう8時半だから、マシオは来ないだろう。 週3回来ると言っても曜日は決まっていないし、事前連絡もないから、目安になるのは時間だけだ。 裕太は口にご飯を入れたまま喋る。 「イケメン、ヒデくんと仲良いよね。」 こいつ、よく見てんな。 マシオが来た時は大抵、入れ替わるように裕太は帰って行く。 俺とマシオが話し込んでいる所なんて知らないはずだが、どうしてそう思ったんだろう?
/435ページ

最初のコメントを投稿しよう!