0人が本棚に入れています
本棚に追加
少女は泣いている。
涙をポロポロと流し……泣いている。
「ねぇ、どうしてかなこはここに行かなきゃいけないの?」
小さな少女はとある学園の前に連れてこられていた。
「パパとママはかなこのこと嫌い?」
少女をこの学園に連れてきた両親に少女は尋ねる。
そんな少女の言葉なんか聞こえないかのように、両親は黙っている。
そして……。
少女に背を向け両親は去って行った。
「お勉強なんかいいよ。
かなこはね、パパとママと一緒にいたいの。
お願い……。
かなこを置いていかないで……。
お願いよ……」
少女は悲願する。
両親を追いかけようとした少女の体を学園の関係者がつかまえる。
大人の力でつかまえられた少女にはなす術はなかった。
「大丈夫。
かなこは一人じゃないよ」
泣きじゃくる少女に誰かが声をかける。
「一人じゃないの?」
その声に少女は顔をあげた。
そこには見慣れた幼馴染の少年がいた。
「うん。
一人じゃない。
かなこの傍には僕がいるよ」
少年は少女に優しく微笑みかける。
「ホント?」
少年の笑顔に少女は次第に落ち着きを取り戻していく。
「あぁ。
ホントだとも……」
少年はコクリと頷きそっと少女の手を握った。
「温かい手。
その手を離さないでね……」
少年の手を少女は握り返した。
安心できる温かい手。
少女は一人じゃない。
何時か両親が迎えに来ると信じて少女は少年とこの学園で生活する事を決意した。
最初のコメントを投稿しよう!