リバー・ラワ

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 例えば君が赤い瞳を持っていたとする。すると僕には君の存在意義がわかる。  君はきっとダークなヒーローで、ちょっと謀略家だったり、或いはシスコンだったり、何かを徹底的に憎んでいたり、とまあつまりはそういうことになると思う。もっとも僕はだからと言って生まれの遅さを卑下したりなどしない。いつの時代にもこういうケチは付いてくる。年代を遡ったところで結局はアルビノ乙などと言われてしまう。話は変わるが鬼の元ネタは外国人だったそうな。  ちなみに僕の瞳は黒だ。もっともこの国の連中は大抵黒だ。ここにファンタジーが入り込む余地はない。当然のことだ。  ところで僕の彼女の瞳は平然と緑色をしている。すると僕だけは彼女の存在意義がわかる。  彼女は団塊世代の対義語くらい奔放でいて、その癖森林のように深遠で優しい。だって彼女は河童みたいだからだ。この河童が何を意味するのかを、わかる人はすぐにわかると思う。そしてわからない人は、未来永劫死ぬまでわからないに違いない。  ☆ ☆ ☆   僕と彼女は二人で住んでいる。一人でさえ手も広げられないような三畳のワンルーム。敷かれた万年床に寝転んで欠伸をする僕。そんな僕を膝枕しながら漫画本を読む君。手錠を掛けられており、端から見れば僕が彼女を監禁しているように映ると思う。 「あ、起きた。ねえトシロー、グスコーブドリは愛さえ見れないって本当?」  彼女が読んでいた漫画から目を離し、手錠をカシャカシャ鳴らしながら僕を見下ろす。僕はその発言が割につまらなかったので、やはり欠伸をしながら垂れ落ちた彼女の髪を撫でる。 「だったらわたし、やだな。愛も見れなかったら、それは人間じゃないもの。愛を知るのって、きっと人間だけよ。そうは思わない? トシロー」  そして初めに言っておかなければならないのだけれど、僕の名前はトシローじゃない・それとは別になんだか銀河鉄道みたいな響きがあってちょっとばかり気に入っている。もちろん三つ並んだ9の方だ。僕はわざとらしく溜め息を吐き、静かに答えた。 「そもそも愛って言葉が日本人だけのものさルル。例えばラヴって口に出してみなよ。ほら、もう違うよね?」  ちなみに僕は彼女のことをルルと呼んでいる。もっともそれも彼女の本名ではない。彼女にはそもそも名前がない。
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