鍵人物語(マリオン・ストーリー)-運命に抗う者達ー

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鍵人物語(マリオン・ストーリー)-運命に抗う者達ー

プロローグ  ふと、思う事がある。この世界が全てなのかと。この世界が唯一なのかと。並行世界の存在。同じ地球でも、支配する生物が人間で無い世界もある筈。そして、並行世界の線上から淘汰された世界も、再び現れる可能性もあるのだ。  例えば、プロ野球選手を目指す少年がいる。彼が将来、確実にそれになれるかと言うと、その保障はどこにも無い。そこで、分岐点が存在する。プロ野球選手になった世界とそうで無い世界。少年は夢を追い続けた。だが「そうで無い世界」ではどうなるのだろうか? 少年が高校野球で名を馳せる名門校に入学したとしよう。だが練習中に、大怪我を負ってしまった。それは彼にとって、その道を諦めざるを得ない程のものだった。ここで分岐点「そうで無い世界」に繋がるのである。  常に違う世界……並行世界とは隣り合わせなのである。  今から語るのは、ある複数の並行世界が絡み合い、幾人かの人物らが紡ぎ出す物語。発端は一人の青年の復讐から始まる。巻き込む者。巻き込まれる者。それを全て知り得た上で、全てを見守る者。それぞれの思惑が絡み合い、運命の輪が動き出す。  彼の名は、ホーリー・ホワイト。彼は全並行世界の安定に直結するチカラの存在を発見した。それは、マリオンと言う名の少女の存在である。彼女は鍵人(かぎと)と呼ばれ、ある並行世界しか存在しないのだった。様々な並行世界に分岐するにせよ、モデルとなる最初の世界が存在する。  その『最初の世界』にのみ、彼女の様な鍵人が存在する。ある特殊なチカラを除けば彼女もただの人間だ。彼女には、全並行世界安定のチカラ以外にも秘密があるのだが、それはまた後の話となる。  少女マリオンと青年ホーリー・ホワイトが存在する、互いの並行世界を「実体」で往来するなど本来は絶対不可能であり破られてはいけない均衡の要。それが崩れる切っ掛けが今、起ころうとしていた。  並行世界は複数存在する。仮に判明している並行世界には、名称を付けて紹介する。最初のモデルとなる世界はアルファ。マリオンのいる世界だ。ホーリー・ホワイトは、ラムダと言う並行世界に存在する。彼の居るラムダは、破錠の道を辿っている。彼は優秀な科学者だが、同時にそれが悲劇を生む事となる。  そして、デルタとサンと言う並行世界にタイシと言う少年が存在する。別々の人物だ。 まずは、デルタのタイシの話をしよう。
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