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「ふん、神の末裔か。随分人間くさい末裔だな」
西方に白き旗が幾重にもなびいている。白き旗は神の末裔『白国』
「気高き白の民は、覇者の導に惑わされたか。あの白き旗はすでに白ではないな」
煙が上がる。どうやら白の陣が動きはじめたようだ。灰色の砂煙が巨大化していく。白き旗は灰に染まった。
そこに、神の末裔たる気高さはない。
ーードッドーンーー
南方から激音が響いた。
「ほお、これはこれは。交わりを持たぬ孤高の民ではないか。覇者の導は孤高の民さえも惑わしたのだな」
南方には黒き旗が蠢く。黒き旗は孤高の民『黒国』
「交ざることを拒んできた黒き芯は、今や黒光りを失ったな」
蠢く黒の陣も移動をはじめた。
ーードッドーンーー
沼に石を撒き散らし、足元を固めながら進む黒の旗は、泥をかぶり黒光りを失った。
臭き泥の旗は、泥の重みでさらに不気味に蠢く。
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