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血に染まりし両手は、力を失いその指先から朱が滴る。
「すまぬ」
床には、動かぬ者達。
男の口から出た言葉は、哀しみと怒りが込められていた。
「オギャアーオギャアー」
ずっと耳に届いている赤子の泣き声。
「ああ、そうだ。わしを責めてくれ」
男は赤子を抱き上げる。泣き声は止まらない。
男の朱色の手が赤子を色付けた。
だが、その朱色よりもさらに際立っているのは、藍の赤子だ。
「オギャアーオギャ……ぁ」
突如止んだ泣き声を不思議に思い、男は赤子の瞳を見る。
頬に流れた涙をそのままに、赤子は男に弱々しく笑ったのだ。
「お前を守る。わしは来るべきその時まで、お前を守る。我が藍の娘よ」
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