10章

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稲妻の鳥籠を空中に浮かべ、二人の魔女がイリックと向き合う。 クリュウは剣を鞘から抜いた。鞘は空中に捨てる。黒い刃で虚空を切る。僅かな音にイリックの視線が向いた。 「早く二人きりになりたいですね。積もる話もありますから」 「イテを元に戻せ」 クリュウは思いの丈をぶつけた。 イリックは動じない。それどころか笑う。左手が空間から何かを呼び出した。無数の蝙蝠が奇妙な羽音を響かせてクリュウと魔女を襲う。 クリュウは剣を振る。切り刻まれた蝙蝠が、地面に落ちていく。その傍らでノーリックとルドワードが長い呪文を唱えた。 「ウォーティ!」 聞き慣れない単語が空中を這う。 蝙蝠に対して姿を現したのは水の神と呼ばれているドラゴンだった。魔女が得意とする召喚魔法をクリュウは呆然と見詰める。ドラゴンは牙を剥いて蝙蝠を食い散らかし、イリックを目指す。拡げた羽根が揺らめく度に空間に水飛沫が上がる。 「ルドワード。貴女はなにもわかっていない。私に子供騙しは通じません!」 イリックが鋭く声を発する。 クリュウは柄を握る。
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