10章

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「イリック。暴走するのも大概にしてもらいたい――という私の忠告は無視ということで良いのね?」 ルドワードが確認するように訊ねた。 対峙するイリックは琥珀色の眼差しをルドワードに注いで笑う。 「私のことを殺す計画しか立てていないお前たちに私は従わない。私は私の自由度生存のために全てを終わらせると決めたのです。止める権利はありませんよ。ルドワード」 「ノーリック、貴様の罪は重い。それを転生という方法で緩和を計っていたというのに。生まれ変わっても魂は腐ったままか。嘆かわしい」 ルドワードが着ている黒いドレスの袖は風に靡く程に長い。風は強さを増すばかりで解決の糸口を運んではこない。 「どの口が言う。私はその男と命を終わらせ、この長きに渡って作られた体制を破壊する」 イリックが、クリュウに向けて氷柱を飛ばす。クリュウを護るのはノーリックから受け取った魔幻の杖だ。薄い幕が氷柱を防いでいる。クリュウまで攻撃は届かない。 「無駄だ!」 ルドワードの一喝が異界生物を呼び出す。 異界生物は、真っ先にイリックを取り囲み食らい付いた。
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