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アルミナに指示されたままにイリックの腹を突き刺した。
断片的な記憶が脳裏を巡る。
イリックは簡単には死ななかった。
人間ならば致死に達する血液を床に流し、狂った眼差しでクリュウを射る抜いていた。
刃より鋭い恨みを感じ、クリュウは足を竦めたことを思い出す。
血液は爪先まで赤く染めていた。
その時と今のイリックは同じではないか。
乱れた口調は本性なのだろう。
クリュウは立ち向かう三人の魔女を見る。
空中で閃くのは蛇行した稲妻であった。
クリュウは目を覆うしかない。
その場を動けずに見守るしかできない。
ルドワードが何故連れてきたのかを考える余裕は残されてはいなかった。
戸惑いと焦りに汚染されたクリュウに飛んできたのはノーリックが勝ち取った剣だ。
ノーリックが魔幻の杖と交換したのだ。
空のてに剣の重みを感じて、クリュウは目を開くことができた。
「お手なしくなさい!」
エリックの咆哮に伸びる稲妻の糸。
「私がスウリックのように簡単に捕まるとでも?」
イリックは誇らしげに稲妻の糸を跳ね返す。クリュウには手を翳しただけにしか見えない。
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