10章

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稲妻がエリックを囲んだのは一瞬の後だ。 ルドワードとノーリックに動揺が走る。 クリュウも固唾を呑んだ。 「私が呪いを得意としていることくらい知っているでしょう? 愚か過ぎるのです。貴女たちは!」 イリックが両手を組み合わせる。 目映い光がエリックを完全に呑み込んだ。 スウリックとは違う光の帯が丁度鳥籠のようにエリックを包む。 閉じ込められたエリックも身動きひとつしない。 クリュウが目を凝らす先で金色の杭がエリックの心臓を貫いた。エリックが着ていたローブの袖も綺麗に留められている。 鳥籠の中に夜蝶の標本。 クリュウは剣を握る。 イリックを殺すことしかできないのだと覚悟を決めた。 「イリック! お前は、どうしていつもいつもこんな馬鹿げたことに走る!」 ノーリックがいい放つ。 「貴女達が私を殺そうとするからです。いわば、延命。次は貴女です!」 イリックが十字を切る。 赤十字架がノーリックに向かう。 「破!」 ルドワードがノーリックと赤十字架の合間に挟まり短い言葉を叩きつける。 赤十字架が粉砕する。 硝子の割れる音が響いて消えた。
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