10章

14/24
前へ
/206ページ
次へ
撒き散る水滴を避けて蝙蝠がクリュウを狙う。 クリュウの真下にはユールが居た。起き上がっては居るが動ける状態ではないようでワームと空を見上げている。 ルドワードとイリックが対峙する間になんとしても間合いを取りたい。 クリュウは蝙蝠を斬ると同時にその場を移動する。 イリックが自分への警戒をほどいたとは思えなかったが足を止めていては堂々巡りであった。 空中を踏み締めるなど初体験だ。 ルドワードの魔法がその状態を作り出している。 クリュウに冷静さが戻りつつあった。 空中であって地面と同じ。 蝙蝠や歪な形状の生物を睨む。 動いてはならないという決まりもない。 身体の動きを確認する。 標的は眼前のイリックだ。 イリックを殺す。 クリュウは剣の柄を握る。 始まりと同じく躊躇いが消えていく。 それはまるで仕組まれたように。 イリックを見据えるクリュウを余所に、ルドワードが旋風を作り出す。 蛇行する風がイリックに向い、イリックを目前に霧散する。
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加