1章

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イテの両親は国王のカトル・ターストに仕えている。 国王が代わると言うことは、職を失うことになるのだ。 両親の職業は機織りだ。イテも両親が朝から晩まで反物を仕立てる姿を見ている。 毎日の食事も機材も、イテの学費も僅かに出来上がる織物の売り上げがあるからこそだ。 国王が代わるとその仕事は他に回されてしまう。 そうなると、家族で路頭に迷うことになる。 イテは、両親の目を盗んで家を出た。 春の陽射しが緑色の葉を照らす道を城に向けてひた走る。 クリュウが教えてくれた道は城への近道で、子供好きなカトルがスラム街に出向くときに使っていた道だった。 馬車が走れる道幅もない細道は、城へと確かに繋がっている。 イテは息を弾ませた。王が代わることで両親が働けなくなるのは嫌だった。 城の裏門に何人か子供が集まっている。 カトルに世話になった子供たちだ。履いていた布の靴に穴が開いていたり、綺麗な服を着ている子供はひとりもいない。それでもカトルの葬式参列したいのだろう。裏門に一列にならんでいた。
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