1章

7/17
前へ
/206ページ
次へ
イテは裏門を開こうとしたが、既にうち鍵が掛けられていた。 コルレット王子はカトル王と違う。子供が大嫌いだ。要らないものは撤去してしまうし、民の言葉に耳を貸さない。従者にも嫌われている。それが次の王となるなどイテには信じることができなかった。 イテが住んでいる街の東側は、広大な森に隣接し、東の魔女は森の一番奥に住んでいる。 東の魔女には何人もの弟子が居て、時々森を抜け出しては悪さをする。 もしかしたら、何かの間違いだと思ったイテは、子供達の群れから離れた。 探しているのは恋人のクリュウだ。 東の魔女の話など聞いてもいない。 確かに最近は忙しいからと会話をする時間が減ってはいたが、見回りの時に手を振ってくれる何時もの仕草だけは変わらなかった。 前門には民が溢れていた。イテの両親も来ている。隣人や店の主たちも黒い服を着て沈痛な表情をしていた。 イテはクリュウを探す。 何時もなら護衛兵士として城の回りにいるというのにどこにも姿が見えない。
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加