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「……あの夏は、あたしにとって特別だったの」
視線を落としながらポツリと口を開いたかれんを横目で捕らえながら、その場にあった大きな石に腰を下ろした。
すぐ隣にいた指先の冷えたかれんの手をゆっくり引いて、隣に誘導する。
頬を赤く染めながらも素直に従うかれんを愛おしく思う。
その時かれんの腕の中にいた黒猫は飛び降りて、俺のひざにすり寄ってきた。
「林間学校の時に話したよね?あたしが暗闇と大きな声がダメな理由」
俺に視線を移し、眉を下げ力無く笑う彼女の姿が儚くて、ギュッと胸が締め付けられる。
その表情はまるで昔に戻ったみたいで。
あの時の“かれんちゃん”と、何一つ変わっていなかったから。
「ん……」
微かに頭を上下させると、かれんは夜空を仰いだ。
「だから林間学校の夜、ミコちゃんが一緒にいてくれて嬉しかった」
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