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「ありがとな」
鼻の下を人差し指でこすり、ニヤついてしまいそうな口元を必死で抑える。
それでもかれんは嬉しそうに「うんっ」と無邪気に笑ってくれた。
その笑顔には“かれんちゃん”の面影が残っていて、それが心臓のスピードを早める。
キスなんかより何故気恥ずかしくなるんだろう。
それを誤魔化すように空を見上げると、あの夏と変わらない俺達を見下ろす夏の大三角形。
今度こそ必ず、君を離さない。
「なぁ、かれん」
「ん?」
あの時言えなかった言葉を、やっと口にするよ。
「遅くなってごめん。これからは俺にかれんの事守らせて」
息を大きく吸ってからかれんを真っ直ぐ見据えて口にすると、彼女の瞳が微かに揺れた。
「……うんっ」
「うわっ」
返事と共に俺に飛び付いたかれんによって、危うく石から落ちそうになり慌てて体制を戻す。
嬉しいけど……
やばい、緊張してるなんて言えない。
「……なぁ、そう言えば忘れてない?」
だから少し、誤魔化させて。
「え?」
「名前呼ぶの」
「あ」
俺はヒーローでいたいから。
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