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「いいの?王子様に話しかけてこなくて」
梨央に言われても、七海は小さく首を横に振ることしかできなかった。
いつもの制服姿だって、爽やかで眩しいくらいなのに、今日の彼は、目を開けていられないんじゃないかと思うくらいに光り輝いて見える。
まるで太陽のように光に満ち溢れている宏に近づいたら、ただでさえ地味な自分は、日の光を浴びた吸血鬼のように灰になってしまうと、本気で思った。
「灰になんて、なるわけないじゃん……」
梨央は冷たく言い放っただけだったが、七海がそう思っているのだから仕方がない。
ただこうして、遠くからでも見つめていられれば、それで十分……。
恋する乙女は、そう思っていたのである。
七海は大きくため息をつくと、
「こんな格好で近づくなんて、絶対にできない!」
と、自分の姿を見下ろして、嘆いた。
「こんなって……いつもの制服じゃん」
「そうだけど。みんながこんなに素敵な格好してるのに、私だけが地味に見える!」
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