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「裏方は、みんな制服だって」
と梨央に言われてしまえば、それまでだ。
七海だって、本気でそんなことを言い出したわけではない。
ただ、ちょっと駄々をこねてみたかったのである。
「だから、出演者をやれば良かったのに」
と、梨央は心の底から残念そうに言うと、七海はきっと親友を睨みつけて
「私にできるわけないでしょ!」
「……まあ、それもそうか」
梨央は諦めたように言ったが、どうしても物足りなかったらしい。
唐突に大きな音を立てて手を叩き、七海を飛び上がらせたかと思うと、とんでもないことを言い出した。
「じゃあさ、今の劇みたいに、私が七海に魔法をかけてあげるよ」
「はあ?」
七海はうさん臭い目つきで梨央を見た。
が、梨央はいつにも増して自信たっぷりな微笑みを浮かべると
「このドレス、貸してあげる。
空き教室で着替えてこようよ」
と、まだ七海が返事もしないうちから、グイグイ腕を引き始めてしまう。
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