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「なに言ってるの?」
七海はその提案が良いものだとは思えず、必死に抵抗したものの、
「七海だって、ドレスを着て宏に素敵な姿を見せれば、印象が変わるじゃん。
ね?せっかく名前もアピールしたんだからさ。
こうでもしなきゃ、またすぐに忘れられちゃうよ」
と、憧れの『王子様』のことを持ち出されては弱い。
結局は渋々ながらも、空き教室までついてきてしまった。
梨央は誰もいない教室に入るや否や、自分はさっさとドレスを脱ぎ始める。
それを見ると、ここまで来てもまだ決心のつかない七海は唇を尖らせた。
「本当にやるの?」
「当たり前でしょ!
大胆に行動しないと、いつまでも宏に気が付いてもらえないよ」
「べつに、気が付いてもらおうなんて思ってないのに……」
七海はブツブツと文句を言う。
が、その後ろ向きな言葉とは正反対に、指は何かを期待してでもいるように震えながら、ブラウスのボタンをはずし始めていた。
彼女も少しは文化祭の浮かれた雰囲気にのまれてしまっていたのかもしれない。
梨央の言う『魔法』にかけられてみたいと、心のどこかで望んでいたのかもしれなかった。
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