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「えーっと……梨央といつも一緒にいる子だよね」
と言い淀む彼に、『お姫様』はきっぱりと言った。
「この子には、山岸七海(やまぎし ななみ)っていう、立派な名前があるの。
クラスメートでしょ。ちゃんと覚えてよね」
美しい『お姫様』に思いがけず冷たく言い放たれると、『王子様』は肩をすくめて、また違う人の輪に入って行ってしまった。
少女の肩におかれた『お姫様』の指には、まるで励ますように力がこめられる。
それでもなお火照った頬をしたままの少女の目は、吸い寄せられるように『王子様』ばかりに向けられていた。
どんなに多くの人に囲まれていても、そのほかは目に入っていないとでも言うように、いつまでも彼ばかりを追い続ける瞳は、ますます輝きを強める。
これには『お姫様』のほうが呆れて、少女の肩にのせていた手をダラリと下ろしてしまったのだった……。
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