恋の魔法にかけられて

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ひらひらとドレスの裾をなびかせて歩かれると、気の小さい七海などは、うっかり踏んではいけないと、心配のあまり動けなくなってしまう。 するとその時、すっかり固まってしまっている七海のそばへ、一際目立つ豪華なドレス姿の女子生徒が駆けてきた。 かと思うと、七海に腕をからめるようにして、ぴったりとくっついてくる。 ただでさえ背が高い上に、ヒールの高い靴を履いている女子生徒が、何の遠慮もなく体重をかけてくるものだから、小柄な七海は危うく引っくり返りそうになった。 「ちょ、ちょっと梨央!危ないってば」 「なによ、七海ってば!テンション低いんだから」 ようやく体を離したのは、豪華な衣装に負けず劣らず華やかな顔立ちの長崎梨央(ながさき りお)。 この容姿と明るい性格で、クラス中の支持を集めてヒロインの座を勝ち取った少女である。 では七海はと言うと……制服姿であることからして、裏方であることは一目でわかる。 彼女は人前に出てセリフなど言おうものなら、たった一言であっても頭が真っ白になってしまうという自分の性質をよくわきまえていたので、背景を描く役割を引き受けていたのだった。
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