ハートレススクール

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強烈な地響きかと思っていた。地震かとも思っていたのに、それはもっと苛烈であって。耳を削り、鼓膜を震撼させた。空気が揺れる。空間が叫んでいる。空がまるで落ちて来たようでいて、授業中であった現時点で誰もが言葉を失っちゃったのだ。左側を伺えば幼馴染みの間抜けな顔がある。私の間抜けな顔も、幼馴染みである直向通――ひたむとおる――の黒い瞳に映っていた。口を開いて目を皿にして、特筆出来る特徴のない顔面が不格好を極めている。不満はあるにはあったのに、言える間はない。 教室を見渡せば幾人と目が重なる。未だ耳鳴りを押し潰す絶叫がなんなのか理解出来なかった。教師に目を向けたとして、担任の田中先生は無言である。無論、特大の液晶画面に写し出されている仮想体には異常事態の対処行動基準が組み込まれている。地震や火事や、或いは不測過ぎる事態に対処する筈の電子の塊は無言に国語の教科書を片手に佇むだけだ。指示がなく、行動がない。鼓膜を通過して脳を揺さぶり、脳髄を叩く音らしきそれに田中先生はなにもしない。
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