第1章

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「ゆりね、きょうちゃんのこと、だいすき!」 「おれも、ゆりのことだいすき!」 ちっちゃいころは、簡単に「すき」って言葉を口にできた。 でも高校生になった今は……「すき」どころか、話すこともできなくなっていた。 「ねぇねぇ、2組の愛梨って子、きのう鮎川くんにフラれらんだって!」 「うっそ! その子、学年でいちばん人気の子じゃん!」 「さすがだれにも靡かない“冷血男子”! 学年ナンバー1でも落とせなかったかぁ」 高校に入学してもうすぐ2ヶ月。 朝からクラスでは“鮎川 恭弥”の話題で持ち切り。 なんでもきのう、恭弥がうちの学年でいちばんかわいい篠原さんに告白されたみたい。 あたしは飲んでいたリンゴジュースをズズッと音を立てながら飲み干した。 「相変わらず人気なんだね~、鮎川くんて。今月で5、6回目じゃない? コクられるの」 「うん。中学のときからだもん」
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