望みと失望の究極の二択

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僕には兄がいた。いるはずだった。双子の兄。 両親は、子ができるならば一人だけ欲しかったのだったという。 けれど、宿った子どもは双子だった。当然産むことを決断してはいたものの、双子の下の子を、親戚か身内にもらってもらうつもりだったという。 しかし、事態は急変した。出産予定日が近づくにつれ、明らかになっていく腹の子の様子が、予定日間近になってどうもおかしいと担当医師が調べたところ、双子の一人が衰弱していたという。 そして傍らにいるもう一人の子。この子はもともと体のサイズと成長具合からして、最初はきっと未熟児として産まれてくるだろうと医師は予想していて、当然そのことは両親に伝えられていた。 出産予定日まであと半月にさしかかったとき、この子は自分に栄養が行き足りていないことに気づき、自らの傍らにいる健康体に手を出した。栄養をその健康体から半分以上も接種し始めたのだ。 このせいで、衰弱してしまったと医師が言うと、とあることを決断することとなる。 「衰弱しているこの子は、言いにくいですが産まれても元気である希望はないと思ってください。」 もう助からない。 母の瞳から自然と涙がこぼれた。それは多分最初で最後の、産みの親、僕らの母としての涙だと思う。 .
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