望みと失望の究極の二択

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出産予定日当日、夕方午後6時50分。病院の帰り、車内にて陣痛が始まった。 父は急いでハンドルをこれ以上ないくらいきって、引き返した。 病院着、担架に乗せられ運ばれていく母。ランプがつき、父はそわそわと、落ち着きのない様子で、ベンチに座ったり立ったりする中、数時間が経った。 初めに産まれた子は、あの双子の一人の命を吸い取った健康体でいる子ども。そのあとはぐったりとして力のなくなった、我が子であった。それが僕の兄。 出産後、母はぐったりとした兄に寄り添って、たくさん泣いたという。 父はそんな母の背中を優しく撫でた。 その後、すくすく育つ僕。炎に包まれ、天へ召されていく兄。 母はやがて、僕の育児を放棄しだす。そんな母に呆れ、父は母の傍に居ながら、僕を(父方の)祖母に引き取ってもらった。 10歳まで、祖母の家で暮らしてきた。名前のない僕に祖母は、「明(あきら)」と名付けてくれた。明るくしてくれる明るい子という意味がこめられているとかなんとか。 祖母は何を思ったか、あるいは父か母の望みか、両親のいる家へ戻ってみないかと言ってきた。 僕は誰よりも両親に会ってみたかった。父は、たまに祖母の家に帰ってくるものの、母は会いに来てくれることは一度としてなかった。 そして、僕は帰る「べき」場所へ帰ったのだった。 .
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