偶然の出会いは香ばしい香り

2/11
前へ
/15ページ
次へ
あれから、8年後。僕はもう進路なんて決めているはずの歳で、卒業まであと1年に迫っている。 新しいクラスになってからも、心機一転とはいかず、呑気に窓の外の綺麗な鳥や蝶、空を見ていることしかしない。 新しいクラスの新しいノリなんか、僕には通用しないし、それで僕がそこに混じるなんてことはない。 僕にとっての環境は環境でしかない。僕はその環境にただいるだけ。木は木、紙は紙。お金だってただの紙切れだ。どんなにリサイクルをしようと、もとをたどればそれはただの素材だ。僕にとっての環境そのものだ。 8時35分、始業式の開始。なんてことのない。機械的に「起立」、「礼」、「着席」を繰り返し、先生達の話を耳で聞き耳で流すのみの単純作業。無駄だろう。 始業式も終わり、教室に戻る。いつもと気持ちは変わらない。ただの移動、それだけのこと。 担当の先生の挨拶。担任教師は去年と変わらない。それこそ、いつもと変わらない。だから、先生は僕を見ても新顔とは何も思わないだろう。 それがなぜか普通に思える自分に、たとえば恐怖を感じていた。 .
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加