偶然の出会いは香ばしい香り

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面倒くさい自己紹介も、別に嫌だとは思わないし新鮮味も感じない。ああ、去年も同じことをやっていたな。じゃあ去年と同じことを言おう。担任は新しくないし、顔見知りのやつだっている。自己紹介せずとも自分を自分以上にわかりきっているやつは、この教室に数十人いるじゃないか。 廊下ですれちがったやつ。移動教室の際、偶然合同授業で少しの時間に顔を見知った奴。面白半分絡もうとして絡めずに、ふざけ合って妙な噂を流した奴。ちょっとだけ、必要なときに話をしてそれ以降何もない奴。 どんなきっかけがあるにせよ、僕はここに居る奴らを少なくとも覚えてはいる。僕こそ教師に相応しいほどに生徒の顔を覚えているものだ。(ただし、名前までは覚えていないが) 「木村 明です。好きなことは、特にありません。」 僕は多分常人以下で、平凡並みに。そして異常だ。 .
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