第三章

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「ん~ふふふふぅ、まさかあんな短時間で負傷者の避難をやってのけるとは! あののっぽとかいう能力者、中々に厄介な奴でし! ま、おかげで魔女っ子ちゃんと戦わなくて済んだのはラッキーだったでしが」 所謂ゴスロリと呼ばれるごてごてとした黒い衣装を纏い、小さな女の子の姿をしたそいつは一人不敵に笑った。 本来彼女が立っている場所には『AWAY』の本部があってしかるべきだが、眼前に広がる光景はまさしく焼け野原だった。 『HOME』元帥の一人、ゼニコ。 彼女の役職及び名前である。 ふと思い立って、懐に手を入れる。 「そういえば、『あの人』は映像見てくれたでし?」 しばらくごそごそとやって取り出したのはスマートフォン。 両陣営で通信機として使用されているものと違い、これはただの市販のモノのようだ。 「……? あれ?送れてないでし」 何回かスマホを繰り返し操作するも、アンテナは圏外のままだ。 動画など送信できるはずがない。 「おっかしいでしねー」 「そうだな、この状況はおかしい」 「ん?」 ふとゼニコが顔を上げると、見覚えのない男が立っていた。 「あれあれ? 初めましてでしね?」 「ああ、二度と会う事はないだろうが」 男は目に強い怒りを宿していた。 「とりあえずその足どけやがれクソ野郎!!」 「……ふぅーん、『AWAY』の残党でしか」 ゼニコの足元には、焼け焦げた兄貴の身体が転がっていた。
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