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「ん~ふふふふぅ、まさかあんな短時間で負傷者の避難をやってのけるとは! あののっぽとかいう能力者、中々に厄介な奴でし! ま、おかげで魔女っ子ちゃんと戦わなくて済んだのはラッキーだったでしが」
所謂ゴスロリと呼ばれるごてごてとした黒い衣装を纏い、小さな女の子の姿をしたそいつは一人不敵に笑った。
本来彼女が立っている場所には『AWAY』の本部があってしかるべきだが、眼前に広がる光景はまさしく焼け野原だった。
『HOME』元帥の一人、ゼニコ。
彼女の役職及び名前である。
ふと思い立って、懐に手を入れる。
「そういえば、『あの人』は映像見てくれたでし?」
しばらくごそごそとやって取り出したのはスマートフォン。
両陣営で通信機として使用されているものと違い、これはただの市販のモノのようだ。
「……? あれ?送れてないでし」
何回かスマホを繰り返し操作するも、アンテナは圏外のままだ。
動画など送信できるはずがない。
「おっかしいでしねー」
「そうだな、この状況はおかしい」
「ん?」
ふとゼニコが顔を上げると、見覚えのない男が立っていた。
「あれあれ? 初めましてでしね?」
「ああ、二度と会う事はないだろうが」
男は目に強い怒りを宿していた。
「とりあえずその足どけやがれクソ野郎!!」
「……ふぅーん、『AWAY』の残党でしか」
ゼニコの足元には、焼け焦げた兄貴の身体が転がっていた。
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