第二章

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「……今度は青い鬼、ね。『こどもの日』ってホントにそんな能力だったっけ?」 フジムラは驚いた様子もなくへらりと笑った。 日本人というだけで祝日は限定されるが、やはり最初から気づいていたのか。 上を見上げる。 フジムラの能力でさっきまで黒々とした夜空が広がっていたそこには、鉄筋のむき出した武骨なコンクリートがあるばかりだ。 天井まで飛んで――届くか? 見たところ普通のコンクリートで、瞬間的に凍らせれば或いは壊せるかもしれない。 しかしこの通路を見渡す限り窓がない。 おそらく地下。 壊したところで、仲良く生き埋めになるだけ上等といったところか。 「まあいいや、入る気がないんだったらさ」 能力を使う際の独特な気があたりに立ち込める。 『山の日』――精神攪乱系の能力を使われれば、こっちが何の遊びを使っていようが一向に勝ち目がない。 だったら。 「能力、『山「『氷鬼』!!」 瞬間、手をついた地面から氷の板が噴出し、フジムラを取り囲んだ。 思いついたのは、相手の周囲の凍結。 普通の能力者相手なら気休めにもならない厚さだが、奴の能力は割れている。 「その能力、『お前が敵を目視できていないと発動しない』――とか、そんなところか? とにかく、俺の五感を狂わせるには『俺の五感のどれかに干渉しなきゃいけない』んだろ」 「ちぃ」 氷の中から、くぐもったフジムラの声が聞こえる。
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