第二章

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奴の能力のルールを看破するのは正直容易かった。 ヒントは閉じ込められていた部屋を出た時、最初に見た『夜の道路の風景』。 何故か奴は俺の前に姿を現し、あの景色をすぐに解いた。 最初は直接勧誘しにきたかったから、という考えもなくはなかったが、だとすれば能力で『声』だけを俺に伝えた方がよっぽど強さの証明になるし、俺の選択肢も狭められる。 わざわざこうして、断られる、歯向かわれる危険を冒してまで俺の前まで出てきたのは、より催眠をかけやすくするため、能力的にそうしなければいけないからだ。 辛いな、条件の厳しい能力というものは。 「じゃあな、戦争が終わったらまた会おうぜ」 「待て!!」 そして俺は一目散に走り出す。 べらべらと高説を垂れている最中に、再び能力に嵌められたらおしまいだ。 奴の声がまだこっちに届いている以上、聴覚から麻痺させられる可能性は十分あった。 『フフン、咄嗟の策にしてはなかなかやるね。『こどもの日』の能力者』 「褒めるくらいならちっとは助けやがれ」 『いやいや、僕はこれでも手を貸してる方なんだよ。他の『始まり』なんて目も当てられない奴等が多くてさ。人格を乗っ取る奴とかもいるしね』 「――何て名前の奴だ?」 『ゼツ』 「ああ、なるほど。話聞いてりゃ納得だ」 意外にも、出口は数分も探せばすぐに見つかった。
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