第二章

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「なるほど、猫と双子が戦ってた建物の下だったのか」 瓦礫をどけながら外に出ると、日の光を感じて眩しかった。 目に手を翳して影を作る。 猫の爆炎により完全に廃墟と化したその建物は、もはや二階以上あったことさえ、鉄筋の燃え残り、溶け残りからしか判断が付かない。 ここをこんな状態にした猫は、今本部で―― 「悠長にしていられる場合じゃなかったな」 『WORLD』の地下に閉じ込められていた時に見せられた、例のテレビ。 敵能力者の一撃で瓦解する本部と、ビデオを撮影していたであろう能力者の能天気な声。 「ゼニコ……」 あの能力者の名前だ。 能力――祝日は、『クルバンハイート』。 たったそれだけしか分からなかったが、あの能力の威力は絶大だった。 だが、竦んではいられない。 今すぐにでも本部に戻らなければ、『AWAY』は本当の意味で壊滅する。 方向の見当もなく走り出そうとしたとき、耳元でおちゃらけた片言が聞こえた。 「やァ、また会ったネ☆」 「!」 反射的に腕を薙ぐと、声の主はひらりと待って、近くにあった瓦礫の上に降り立った。 「アハハ、元気そうで何よリ☆」 「てめぇのっぽ!何でこんなところに!」 ひょろりと背の高い、金髪の男。 戦争が始まる前から何だかんだと司会の端々に現れるそいつは、確かに「のっぽ」と呼ばれている『AWAY スカウト部門』の幹部だった。
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