241人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
「なるほど、猫と双子が戦ってた建物の下だったのか」
瓦礫をどけながら外に出ると、日の光を感じて眩しかった。
目に手を翳して影を作る。
猫の爆炎により完全に廃墟と化したその建物は、もはや二階以上あったことさえ、鉄筋の燃え残り、溶け残りからしか判断が付かない。
ここをこんな状態にした猫は、今本部で――
「悠長にしていられる場合じゃなかったな」
『WORLD』の地下に閉じ込められていた時に見せられた、例のテレビ。
敵能力者の一撃で瓦解する本部と、ビデオを撮影していたであろう能力者の能天気な声。
「ゼニコ……」
あの能力者の名前だ。
能力――祝日は、『クルバンハイート』。
たったそれだけしか分からなかったが、あの能力の威力は絶大だった。
だが、竦んではいられない。
今すぐにでも本部に戻らなければ、『AWAY』は本当の意味で壊滅する。
方向の見当もなく走り出そうとしたとき、耳元でおちゃらけた片言が聞こえた。
「やァ、また会ったネ☆」
「!」
反射的に腕を薙ぐと、声の主はひらりと待って、近くにあった瓦礫の上に降り立った。
「アハハ、元気そうで何よリ☆」
「てめぇのっぽ!何でこんなところに!」
ひょろりと背の高い、金髪の男。
戦争が始まる前から何だかんだと司会の端々に現れるそいつは、確かに「のっぽ」と呼ばれている『AWAY スカウト部門』の幹部だった。
最初のコメントを投稿しよう!