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月に照らされた夜の空に一隻の船が飛んでいた。
……否、これは船では無く飛空挺だった。
帆の代わりに巨大なプロペラを何機も登載して海では無く空を駆ける船。
ここは四つの大陸の中心ある大海原……飛空挺はその大海原の上空を進んでいた。
飛空挺の発祥は西方大陸にある帝国からだったが…今では各大陸の主要国全てにその技術が伝わり、各国でも生産されている。
その飛空挺の甲板の上を1人の警備兵がカンテラを掲げて巡回していた。
「ふぅ…夜間の巡回かったるいなぁ~……さっさと切り上げて中で休もう…」
いささか、真面目さに欠けた態度で巡回を続けると警備兵は甲板の縁に大きなトランクケースを持った1人の少年が立っているのに気付いた。
「ん?……誰だ?」
警備兵は訝しげな表情でカンテラを照らして少年を見た。
歳は16か17、足元まで丈のある黒いコート、そして灰色のズボンとワイシャツ……全体的にゴシック調のコーディネートだった。
青い髪、青い瞳の整った顔立ちだが…どこか眠そうな表情をしていた。
そして、漆黒の猫耳と漆黒の尻尾を少年は生やしていた。
「……!!…その猫耳と尻尾……まさか、貴種の獣人の方ですか!?」
警備兵は驚きの声をあげた。
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