第一章

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「ん、……美味しい」 彼女は目の前に置かれたペペロンチーノをフォークで絡め、口に運んだ後そう言った。 少し微笑みの交えた賛美の呟き。別に僕が作ったわけじゃないのに、何故か嬉しく感じてしまった。 「安定した味だよね。不味いって事はまずない」 「でも愛を感じない。お手本通り、って感じ」 「まぁファミレスなんだし。そこは妥協しないと」 僕はミラノ風ドリアに懸命な温度調節を試みながら、適温でいただけるペペロンチーノを羨ましそうに見つめた。 彼女はまたもやフォークでパスタを絡めとる。今度は上品にスプーンも使って。 「私だったらもっと愛をこめて作るね。心が温まる様な愛を」 「具体的にどうぞ。例えば?」 「う~ん……マイラー油を隠し味に使う」 「それ心どころか全身が温まっちゃうよ。主に口の中が」
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