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「ん、……美味しい」
彼女は目の前に置かれたペペロンチーノをフォークで絡め、口に運んだ後そう言った。
少し微笑みの交えた賛美の呟き。別に僕が作ったわけじゃないのに、何故か嬉しく感じてしまった。
「安定した味だよね。不味いって事はまずない」
「でも愛を感じない。お手本通り、って感じ」
「まぁファミレスなんだし。そこは妥協しないと」
僕はミラノ風ドリアに懸命な温度調節を試みながら、適温でいただけるペペロンチーノを羨ましそうに見つめた。
彼女はまたもやフォークでパスタを絡めとる。今度は上品にスプーンも使って。
「私だったらもっと愛をこめて作るね。心が温まる様な愛を」
「具体的にどうぞ。例えば?」
「う~ん……マイラー油を隠し味に使う」
「それ心どころか全身が温まっちゃうよ。主に口の中が」
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