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父…さん
中の声を残さず聞き取ろうと、ビタッとドアに耳を押し当てる。
辛うじて聞き取れるその声に、俺は妄想を駆り立てると自身を握る手を動かした。
父さんが俺を求めてる。
早く欲しいって潤んだ瞳で訴えてる。
ああ、父さん!
そんな表情しないで。
そんな瞳で見つめられたら、もぅぐちゃぐちゃにしたくなるじゃないか!
泣いたって許してやんないんだから!
奥の奥まで激しく突きまくって、朝になるまで何回だって父さんの中で果ててやる!
父さん、父さん!
大好き、大好きだ!父さ…
「兄さん」
へ?
不意に耳許で聞こえた声。
いや、幻聴だし。
「に・い・さん」
今度はその息が耳にかかり、俺は恐る恐るドアとは反対側に顔を向けた。
「ぎゃモガッ!」
思わず叫び声をあげようとした俺の口を、碧は慌ててその手で塞いだ。
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