5.①

9/30
前へ
/262ページ
次へ
父…さん 中の声を残さず聞き取ろうと、ビタッとドアに耳を押し当てる。 辛うじて聞き取れるその声に、俺は妄想を駆り立てると自身を握る手を動かした。 父さんが俺を求めてる。 早く欲しいって潤んだ瞳で訴えてる。 ああ、父さん! そんな表情しないで。 そんな瞳で見つめられたら、もぅぐちゃぐちゃにしたくなるじゃないか! 泣いたって許してやんないんだから! 奥の奥まで激しく突きまくって、朝になるまで何回だって父さんの中で果ててやる! 父さん、父さん! 大好き、大好きだ!父さ… 「兄さん」 へ? 不意に耳許で聞こえた声。 いや、幻聴だし。 「に・い・さん」 今度はその息が耳にかかり、俺は恐る恐るドアとは反対側に顔を向けた。 「ぎゃモガッ!」 思わず叫び声をあげようとした俺の口を、碧は慌ててその手で塞いだ。
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

676人が本棚に入れています
本棚に追加