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「ぷっくくくくく」
電車の中、亮は思い出したかのように笑いをこぼした。
りょーちんとは高校から学校が違うけど、お向かいさんのおかげで今でもよく会っていた。
というか、朝こうやって一緒に行く日もよくあるし、何よりバイト先は同じだ。
「何笑ってんだよ?」
プクーと頬を膨らませて目の前の亮を見上げる。
「いや、何でも」
「嘘つけ。どうせ再婚のことだろ。男同士で結婚とか笑い話にしかなんねーもんな」
「笑い話だなんて、父さん達は真剣に愛し合ってるんですよ?」
亮の隣、同じように俺の前に立っている碧が口を挟む。
「真剣だから笑えるんだろ。子持ちのいい歳した男が二人揃って結婚とか冗談じゃねーって。せめて交際程度に止めとけよ」
そうだよ、結婚とか言って一緒に暮らし始めたから嫌なんじゃないか。
今まで通り俺の知らないとこで付き合っててくれてたなら、父さんのあんな表情見なくて済んだのに。
俺には見せたことにない、高臣さんにだけ向ける幸せそうな表情。
年甲斐もない満面な笑みが、好きを溢れさせていた。
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