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「ほんとーにしてないんだな?」
「当たり前でしょ!あんまりしつこいと怒るよ!」
「…わかった。信じる」
分かればよろしい。
やっと亮が手を離してくれたから、床に脱ぎ捨てたままだった服を拾ってハンガーに通す。
それをロッカーに掛けてバタンと扉を閉めた。
「さぁーて、今日も頑張りますかぁ。りょーちんは今日はどこ?本館?別館?」
んー、と大きく伸びをして振り返る。
俺たちの働くバイト先は本館にカラオケがあって、同じ敷地内にある別館にボーリング場やらゲーセン等があるここら辺じゃ一番大きなアミューズメントパークだった。
俺は基本的にカラオケ部門で働いてるけど、りょーちんは本館別館構わずに、人手が足りない所へ派遣されていた。
やっぱりょーちんって、デキル人間なわけなんだよ。
なんせ中高と生徒会長を勤めあげた人だからね、こんな俺とは大違い。
「今日は別館」
「そっかぁ。残念。一緒だと良かったのに」
りょーちんがいると色々こなしてくれて楽なのに。
「…なぁ、葉?」
「なーに?」
「さっきの続きってわけじゃないんだけど、キスはしたんだよな?」
「またその話?しつこいってさっきも言ったじゃん…か」
一歩近づいた亮に、不意に顎をつかまれて上を向けさせられる。
「俺にもさせて」
そう言った亮は目を閉じると、フッと唇を重ねた。
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